





作品紹介

扇の骨組み用に薄く加工された竹には高い「保香性」があります。その特徴を活かして開発された、新しいルームフレグランス【かざ】シリーズ。「かざ」とは京ことばで「香り」を意味しています。部屋に置くだけでほのかに広がる上品な香り。繊細な細工をほどこした扇骨とたおやかな色合いを放つ清水焼の組み合わせが、モダンな「和」を感じるアクセントになるのです。
製造をすべて京都で行うオールメイド京都でつくられた【かざ】シリーズは、大西常商店とデザイナーの三宅さんとの共創でうまれたプロダクトです。プロダクト開発ストーリーをデザイナーの三宅さんと大西常商店4代目の大西里枝さんにおうかがいしてきました。
かつては当たり前だった「工芸」の価値を問い直す「ものづくり」

日本の文化を象徴する歴史都市、京都。そこには長い年月をかけて蓄積された工芸の技術があります。しかし、生活様式の移り変わりから現代のニーズにフットしなくなる工芸も少なからずあるのです。元々は人々の日常を当たり前に支えてきた工芸。本来は生活に溶け込んでいた工芸の技術や魅力的な文化が消えてしまうのは、何とも言えない寂しさがありますよね。そのような背景から、昔は当たり前だった工芸の存在意義を、あえて現代に通じる価値に解釈し直す「ものづくり」があるのです。それが、三宅さんと里枝さんが出会った「あたらしきもの京都」というプロジェクトでした。
三宅さんは、ハイテクなプロダクトから工芸のようなプロダクトまで幅広いジャンルを手掛けるデザイナーです。デザインには、モノゴトの価値を根本から問い直し、改めて誰しもが見えるようにする力があります。【かざ】シリーズは扇子がもつ潜在的なポテンシャルを分解し、再構築したプロダクトなのです。
創りたい「もの」が明確だからこそ、よいものができる
「あたらしきもの京都」でのものづくりが始まる前から、里枝さんには「フレグランス」というテーマで、扇子を応用したプロダクトのイメージがありました。しかも、かなり明確に。三宅さんは、里枝さんの思い描くイメージをビジュアライズしていったのです。ビジョンが明確な里枝さんとのプロジェクトがとても面白かったとおっしゃる三宅さん。里枝さんは「現代において、扇子にはどのよう価値があるのか」「工芸は今後どうあるべきか」という問いを深く考えてぬいていました。「あれだけビジョンがしっかりしているメーカーさんは、特に工芸の世界では少ないです」という三宅さんの言葉がとても印象的です。
「扇骨の保香性」という機能を、いかに「フレグランス」として実用化するか、そして実用性以上の価値をもたせるか。開発プロセスにおける何かが、ほんの少し違っただけでも、今在る【かざ】シリーズではなかったのです。
価値を直観的に伝えるデザインの力

「もの」の価値とはいったいどのように決まるのでしょうか。普段の買い物でそこまで考える人はいないと思います。しかし、同じ機能を発揮するプロダクトでも値段はそれぞれ違いますよね。三宅さんは「デザインとは価値をつくる仕事」だとおっしゃっています。
【かざ】シリーズには、多くの人が直観的に「美しい」と思える、機能以上の「何か」があります。その「何か」はあらゆる要素が複雑に調和して形づくられているのです。ただ、直観的に感じることでも、個々の要素や組み合わせを客観的に分析すれば、恐らく言語での説明が可能である。それが、三宅さんの考え方です。
しかし、ゼロから創りだす時は「主観で考えて自分が欲しいと思えるか」がとても大事だと三宅さんはおっしゃいます。私たちは何気なく「もの」を選んでいますが、直観的に「うーんこれはちょっと…」というプロダクトの一部を微修正しただけでは、「これは素晴らしい!」とは決してならない。そこには絶対に超えられない境界線があるのです。
【かざ】シリーズは、三宅さんが主観と客観のバランスを取りながら、自身が「欲しい」と思える状態に仕上げられていったのです。
【かざ】シリーズは「扇骨の保香性」を活かした、香りを楽しむ「フレグランス」です。
その機能と三宅さんのデザインが融合したからこそ、見えるところに置いて「造形美」まで楽しめるプロダクトになったのですね。
伝統工芸をベースに現代の生活様式にフィットした【かざ】シリーズ

大西里枝さんは、京都で長年に渡って扇子の製造から卸、小売までを一貫して手掛ける大西常商店の4代目。着物姿で接客するその姿は、誇りをもって業界に携わるスペシャリストとしてのオーラを放っています。大西常商店の店内へ一歩足を踏み入れると、歴史を重ね熟成した趣に自然と背筋が伸びてしまいます。
扇子のもつ特性を見事に他分野へ応用した【かざ】シリーズ。このプロダクトは扇子をとことん熟知している職人の知見からうみだされたと思うかもしれません。しかし、うみの親である里枝さんは実家の家業を継ぐ前に、全くの異業種で社会人経験を積まれたそうです。そこは何と「ものづくり」とはとても遠い通信インフラを扱うテクノロジー企業。テクノロジーを起点にした無形サービスの考え方と伝統技術でつくられる扇子は、どのようにして【かざ】シリーズへと結びついていったのでしょうか。
「当たり前」を見直すことがアイディアのきっかけに

「扇子であおぐといい香りがするのはなんで?」というお客さんの何気ない質問が、【かざ】シリーズのうみだされるきっかけになったそう。扇子業界に長年携わる人にとっては当たり前のことでも、お客さんには新鮮だったのです。そして当時はまだ家業ついて間もない里枝さんにとっても、その問いは扇子に対する好奇心をさらに高めました。里枝さんが87もある扇子の製造工程を丹念に調べていくと、実は工程の中で扇骨に香料をつけていることが分かったのです。何と扇骨の特性で香りは一年以上も続くそう。
この出来事がきっかけとなり、扇骨を活用したフレグランスのアイディアが里枝さんの頭の中で形創られていきました。そしてこのアイディアは、「扇子業界の当たり前」をもう一つ見直しています。それは「夏場忙しく冬場が暇」という商習慣。里枝さんには家業に携わってから、「お客さんが一年を通して使える商品をつくりたい」という想いがありました。
扇子業界にあった「2つの当たり前」を全くの異業種に携わってきた里枝さんが見直したことで、扇子の機能から香りを楽しむルームフレグランスが誕生したのです。
ユニークで面白いアイディアを前進させたデザインの力

【かざ】シリーズの開発は里枝さんにとってはじめての「ものづくり」でした。
漠然としたアイディアから明確なコンセプトまで描いた里枝さんですが、そこから具体的な形にしていくまでは長い道のりだったそうです。いったい何から手をつければよいか分からない状況からのスタートでした。【かざ】シリーズには扇骨、陶磁器や香料など、多岐に渡る異業種の製造業者さんが関わっています。それぞれが専門技術でものづくりをする職人さんと協業しながら進めなくてはいけません。とても難しいプロダクト開発です。
そこで里枝さんのチャレンジを大きく前進させたのは、「あたらしきもの京都」というものづくりプロジェクトでした。「あたらしきもの京都」とは、京都の伝統工芸や地場産業を起点に新しいプロダクトやテキスタイルをつくりだす取り組みです。そこに参画していたデザイナーの三宅さんと出会ったことで、里枝さんの想い描く【かざ】シリーズのコンセプトが具体的な形になっていきました。
際立つ存在感は意味と技術をこめた細部へのこだわりから
【かざ】シリーズでまず目を引くところは、扇骨に刻まれた繊細な文様です。この文様は「唐草模様」をベースにデザイナーさんがアレンジしています。「唐草模様」はつる草が四方八方に伸びてからみあう文様です。どこまでも伸びていくツタの様子は、まさに生命力の象徴。一族の繁栄や長寿を意味する、縁起がよい吉祥文様として古今東西で愛されてきました。このような扇骨への加工は、高級扇子として知られる「白檀扇」に施されていることが多く、高価なものだと数十万円もします。【かざ】シリーズでは高度な技術を活用し、インテリアとしての際立った存在感を創り出しているのです。文様の加工は機械と手作業の工程が半分ずつあります。とても細かい加工なので、検品でどうしても多くの不良品が出てしまうそう。しかし【かざ】シリーズではお客さんの満足のために、あえてチャレンジしています。さらに扇骨部分には脱色や色染めの工程もあります。ここは納得の色合いを出すために、里枝さん自ら何度も試作から思考錯誤したそう。【かざ】シリーズの主役である扇骨部分には、細部への徹底したこだわりがあるのです。
そして主役を引き立たせる土台の清水焼は、扇骨の色合いに合わせて釉薬から選定していったそう。陶磁器専門の研究所で釉薬のサンプルを一つ一つ吟味し、実際に焼成しては扇骨とのバランスを確認していきました。そして【翠】【素】【玄】のそれぞれが、お部屋に置かれたシーンを想像して、その雰囲気に合った香りを調合していったのです。もちろん開発工程は一直線に進まず、各工程を行ったり来たりしながら、20回以上の試作を繰り返してようやく【かざ】シリーズはできあがりました。
これからの伝統工芸を根本から問いながらのものづくり

【かざ】シリーズは里枝さんが家業に携わってから初めて手掛けたプロダクトです。そのためとても思い入れがあるそう。発売から時間が経った今でもみれば見る程改善したいポイントが見つかるようで、お客さんから見たら決してわからない箇所でも、うみの親は常に気にしているのです。里枝さんは【かざ】シリーズがお客さんを癒すプロダクトであってほしいと願っています。現在の忙しない生活の中に潤いを提供できることが、伝統工芸の価値であると考えているからです。
里枝さんは伝統工芸業界のど真ん中で活動しながらも「伝統工芸は今後必要か?」という根本的な問いを持ち続けています。それはなぜか、例えば現代では大西常商店が扱う「扇子」を「携帯扇風機」で代替できてしまう現実があるからです。現代のように変化が早く、絶えずトレンドが入れ替わる中では、伝統工芸の存続は難しい局面にあるのです。しかし、厳しい環境にありながらも「お客さんが求めること」を常に考え続けている企業は、徐々に元気になっているそう。伝統工芸のベースを大事にしながらも、少しずつ現代の生活へフィットさせたものづくりをはじめています。そして大西常商店も伝統工芸業界をリードする企業の一つ。
里枝さんは、大西常商店のプロダクトを開発していくにあたり、五感を使った体験から「驚き」や「喜び」をうみだすことに重きを置いています。今後、見た人を「あっと」思わせる大西常商店の新たなプロダクトが楽しみですね。
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販売元
大西常商店
- 作品情報(仕様)
-
- 容量:100ml
- 重量:120g